タイムラインとは
タイムラインとは、自治体や住民が災害の特性や危険性を常日頃から共有し、災害発生時に迅速・円滑・的確に対応するための事前防災行動計画です。「いつ」「誰が」「何を」行うのかをあらかじめ時系列にまとめることで、防災活動を効果的に進めることができます。
近年、日本各地で発生する大規模水害を受けて、タイムラインの重要性が認識されています。特に、発災までの時間的な余裕があるハザードに対しては、事前に関係機関と連携を図り、地域住民や現場対応者の安全確保を実現するためにタイムラインが有効です。
タイムラインはその機能や策定に関わる参加者の範囲に応じて、「流域タイムライン」、「自治体(多機関連携)タイムライン」、「コミュニティタイムライン」、「マイ・タイムライン」の4つに大別されます(コミュニティタイムラインについては、こちらで解説しています)。
これらのタイムラインは、地域の防災体制の強化や住民の意識向上に寄与する重要なツールです。各地域でのタイムラインの策定や実施により、災害時の迅速かつ効果的な対応が可能となり、安全な地域づくりに貢献します。
タイムラインの役割
日本の災害対応を司る法律は「災害対策基本法」です。同法は、国土と国民の生命や財産を災害から保護することを目的として制定されており、これに基づき、政府の防災対策に関する基本的な計画である「防災基本計画」が作成されています。さらに、この防災基本計画に基づいて、地方公共団体は「地域防災計画」を作成しています。
しかし、災害対策基本法は、主に発災後の対応に焦点を当てており、発災前の防災行動については不十分です。地域防災計画においても、発災前の防災行動に関する項目数が明らかに少なく、これを補完する具体的な実行計画が必要とされています。その役割を果たすのが、タイムラインです。
タイムラインの効果
タイムラインでは、策定時に検討・抽出した防災行動が、行動項目ごとに構造化されています。これにより、行うべき防災行動の抜け・漏れを防止できるとともに、適切な防災対応が可能となります。
災害の影響や被害を軽減するためには、災害対応時の防災関係機関の連携が重要です。タイムライン策定検討会において、各参加機関や部署が果たすべき役割を議論し、タイムラインにまとめることで、迅速かつ効果的な災害対応が可能となります。
また、タイムラインは実際の運用や訓練を通じて検証され、常に改善されるべきです。適切な訓練や実施結果のフィードバックを通じて、タイムラインの精度や効果を高めていくことが求められます。連携プロセスや行動項目の見直し、災害対応のベストプラクティスの反映など、持続的な改善を図ることが重要です。
顔の見える関係
タイムラインは、地域の防災に関わる全ての関係機関が参加する複数回の検討会を経て策定されます。検討会の場では、共通の防災目標を持って意見交換が行われるため、顔の見える関係が構築されます。この関係が自治体の意思決定を支え、適時・的確な防災行動につながる仕組みとなっています。
地域の災害リスクの共有
タイムラインの策定にあたっては、地域の特性や既往災害を考慮した災害シナリオを使用します。災害シナリオには、気象や河川水位の状況、発表される気象情報などが発災の前後にわたって時系列で盛り込まれるため、タイムライン策定検討会の参加者全員が地域の災害リスクを共有し、当事者意識をもって議論することができます。
防災意識、防災知識の向上
タイムライン策定検討会では、座長やアドバイザーとして学識者が参加し、幅広い見識に基づく防災に関する講話や、気象官署や河川管理者による気象防災や河川に関する情報提供が行われます。これにより、専門知識が少ない参加者も検討会を重ねるごとに防災に関する理解と知識の向上を図ることができます。
住民の安心感
タイムラインは、住民の命を守るという目標や災害対応職員の人手不足を考慮して、早い段階で防災行動を取れるように計画されます。住民への広報活動も、避難に十分な時間を確保できる段階で行われるため、住民の安心感につながります。
支援実績
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